営業戦略
「営業担当者を採用したのに、新規の取引先が一向に増えない」
「技術力には自信があるはずなのに、結局は価格でしか比較されない」
「受注をつくれるのは社長だけで、そのやり方を組織に展開できない」
こうした課題を抱える下請け中心の企業の経営者・営業責任者は少なくありません。採用しても成果が出ないのは能力不足ではなく、誰に何をどのように売るかが決まらないまま人だけを増やしているからです。
ただし本記事は「下請けをやめるべき」とは考えません。危ういのは下請けであること自体ではなく、特定の元請けから仕事が来なくなった瞬間に自社で売上をつくれない状態です。本記事では、自社で顧客と受注をつくる営業機能を、組織の「型」として設計・育成する方法を解説します。
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この記事はこんな方におすすめです
- 受注が特定の元請けと社長の人脈に依存している
- 営業担当者を採用したが、何をすべきか決められず成果が出ていない
- 【製造業】見積の価格比較(叩き合い)や、特定元請けの海外移管・減産リスクから脱却したい
- 【IT・Web】受託開発やSESで、人月単価の叩き合いや元請けSIer依存から抜け出したい
- 下請けを続けながら、自社で受注をつくれる状態を目指したい
なぜ下請け企業では営業が育たないのか?
下請け企業で営業が育たない原因は、担当者の能力ではなく事業構造にあります。営業活動をしなくても元請けから発注が届く状態が続くと、新規開拓は業務として定義されず、経験も蓄積されません。
さらに、高い技術力が顧客の買う理由に翻訳されないまま、誰に何をどのように売るかも決まっていない状態が重なります。その結果、営業担当者を採用しても動き出せない状況が生まれるわけです。製造業に限らず、受託開発やSESでも同じ構造が確認できます。
既存取引先から仕事が来るため、新規営業の習慣がないから
既存取引先からの受注が続いてきた企業で営業が育たないのは、新規開拓が業務として定義されてこなかったためです。営業活動をしなくても受注が入る構造が続いてきたことで、次のスキルが蓄積されていません。
- 顧客を自ら探す
- 課題を聞き出す
- 提案する
元請けからの発注に応じる業務が中心だったため、これらは組織の型として存在していないのです。中小企業庁の調査では、受注側事業者の87.3%が、最も多く取引している販売先との取引継続年数が10年以上に達しています。
一方で、取引継続年数が10年を超える企業の売上高増加率は、10年未満の企業を大きく下回っています。長期取引は受注の安定をもたらす反面、成長の機会を狭めているわけです。
参考:中小企業庁「2020年版中小企業白書」
高い技術力が「顧客が買う理由」に変換されていないから
技術力があるのに価格でしか比較されないのは、技術情報が自社目線のまま止まっているためです。顧客が知りたいのは技術の詳細ではなく、その技術で自社のどの課題が解決するかだからです。多くの営業資料は、次の情報にとどまっています。
- 保有している技術・設備・対応できる仕様
- 従業員数や対応可能なリソース(体制)
- これまでの実績や対応範囲の一覧
これらは自社が何を持っているかの説明にすぎず、歩留まりの改善幅やリードタイムの短縮といった顧客側の成果には翻訳されていません。システム開発の現場でも、使用技術の一覧だけで終わり、発注側の負担軽減まで示せていないケースは珍しくありません。
技術力は、顧客の言葉に翻訳されて初めて「選ばれる理由」になるのです。
支援先の製造業さんの営業資料を見ると、だいたい「公差±0.01mm対応可能」みたいな数値がずらっと並んでるんです。でもそれ、聞いた相手は「で、それで何が変わるの?」ってなる。「その精度がないと御社のここで不良率が上がりますよ」まで言えて初めて、相手にとっての意味になるんですよね。
誰に何をどのように売るかが決まっていないから
営業担当者を採用しても動けないのは、誰に・どのように売るかが未定義のまま活動させているためです。売る相手とアプローチの仕方が決まっていないと、行動の優先順位が判断できないからです。実際、これらが未定義のまま活動を求められた企業では、次が定まりません。
- 訪問先
- 提案内容
- 商談の進め方
背景には、元請け以外の顧客像を描いた経験がなく、かつ自社なりの営業の型を持たなかったという事情があります。
長年、発注元は与えられるものであり、自社で選ぶ対象でも、営業の進め方を自分で設計する対象でもありませんでした。誰に何をどのように売るかが決まっていない限り、どれだけ優秀な人材を採用しても成果にはつながりません。
下請け企業の営業が目指すべき状態とは?
下請け企業が目指すべきは、下請けをやめることではなく、下請けを続けながら自社で受注をコントロールできる状態です。新規の受注経路を持ち、取引先が分散し、価格と受注量を自社の判断で決められる。この3つが揃って初めて、下請け構造のリスクから実質的に抜け出せたといえます。
下請け取引を続けながら新規の受注経路を持っている
理想の状態は、下請け取引を続けながら、自社発の受注経路も持っていることです。下請けそのものには、次の利点があり、否定する必要はありません。
- 営業コストを抑えられる
- 安定的に受注できる
課題は下請けであること自体ではなく、その取引が止まった瞬間に代替手段がないことにあります。受注経路が元請け1本に絞られていると、発注が止まった途端に売上がゼロに近づくリスクを抱えるでしょう。
展示会・Web経由の問い合わせ・既存顧客からの紹介など、経路を複数持っておくことで、既存取引を維持したまま自社の裁量を広げられます。
受託開発やSESでも、元請けSIerからの案件に加えて、エンドユーザーとの直接接点を持てているかが同じ判断軸になります。理想は、下請けを続けながらも受注経路を自社で複数持てている状態です。
特定の元請けに依存せず取引先が分散している
目指すべきは、売上が特定の1社に偏らず、取引先が分散している状態です。売上の大半を1社が占める構造では、次の影響を自社の努力とは無関係に直接受けてしまいます。
- 元請けの生産移管
- 元請けの方針転換
主要取引先が海外生産へ切り替えれば、発注は自社の実力とは関係なく減少するでしょう。取引先数を増やすこと自体が、こうした受注量の変動を抑える経営リスク対策になります。取引先の分散度合いは、そのまま経営の安定度を映す指標になるのです。
自社の判断で価格と受注量をコントロールできている
目指すべき状態は、価格と受注量を自社の判断で決められることです。中小企業庁の調査によると、次の実態が明らかになっています。
- 価格転嫁率は54.2%にとどまる
- コスト増加分を全額転嫁できた企業は27.3%にすぎない
- 価格交渉が行われた割合は90.7%と高い
つまり、交渉の場は用意されていても、価格を正当化する材料を自社側が示せていないケースが大半です。価格決定権を取り戻せるかどうかは、下請け構造から実質的に抜け出せているかを測る指標になります。
人月単価を一律で交渉するのではなく、成果や工数削減効果を根拠に価格を提示できるかどうかは、受託開発やSESでも同じ分かれ目です。価格と受注量を自社でコントロールできて初めて、下請け構造から抜け出せたと言えるでしょう。
参考:中小企業庁「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査」
下請け企業が営業担当者を採用する前に決めるべき5つのこと
営業担当者の採用を成果につなげるには、採用前に自社の「売り方」を決めておく必要があります。技術の翻訳、ターゲット選定、営業資料、受注経路、営業プロセスの5つが未定義のまま人だけを増やしても、動けない状態が続くだけです。まずは経営者・営業責任者自身がこの5つを整理しておきましょう。
自社の技術・実績の「顧客の課題解決」の言葉への翻訳
採用前に決めるべきは、自社の技術や実績を顧客の課題解決の言葉に翻訳できているかです。加工精度や保有設備、開発実績などのスペックは、そのままでは営業担当者の武器になりません。担当者が商談で使えるのは、次のような言葉です。
- どの課題を解決できるか
- どの成果につながるか
- 既存顧客がどう評価しているか
この翻訳を経営者や現場の技術者任せにすると、採用した営業担当者は技術を語れないまま商談に入ることになります。技術の翻訳が済んでいて初めて、営業担当者は自社の強みを顧客に伝えられます。
取引が成立しやすいターゲット業界・企業の絞り込み
採用前に決めるべきは、取引が成立しやすいターゲット業界・企業を絞り込めているかです。ターゲットが未定義のまま採用すると、営業担当者は訪問先すら自分で判断できません。絞り込みの視点としては、次が挙げられます。
- 自社の技術と親和性が高い業界
- 価格以外の価値を評価してくれる企業規模
- 既存の取引実績から広げやすい隣接領域
この整理がないまま活動を求めると、名刺交換の数は増えても商談化率は上がりません。受託開発やSESでも、元請けSIer以外にどのエンドユーザー業界を狙うかを事前に定めておく必要があります。ターゲットが絞り込めていれば、採用した営業担当者は初日から動けるでしょう。
会社紹介と技術一覧ではなく、課題解決を軸にした営業資料の準備
採用前に決めるべきは、会社紹介と技術一覧ではなく、課題解決を軸にした営業資料をつくれているかです。多くの下請け企業の資料は、沿革・組織図・設備一覧で構成され、顧客の課題には触れていません。課題解決型の資料に必要な要素は、次の通りです。
- 顧客がよく抱える課題の提示
- その課題に対する自社の解決アプローチ
- 導入後の成果や数値
営業資料がこの型になっていないと、採用した営業担当者は「何を武器に話せばよいか」がわからないまま現場に出ることになります。課題解決を軸にした資料があって初めて、営業担当者は自信を持って商談に臨めます。
営業資料を見せてもらうと、1枚目が会社沿革、2枚目が組織図っていう会社、正直まだ多いんです。社長さんは思い入れがあるんでしょうけど、初めて会う相手が知りたい情報じゃないんですよね。「これを読む相手が最初に知りたいことは何か」から作り直すだけで、商談での反応がまるで変わります。
展示会・Webなど社長の人脈以外の受注経路の確保
採用前に決めるべきは、社長の人脈に頼らない受注経路を用意できているかです。受注経路が社長の紹介や既存の元請けに限られていると、営業担当者は自ら見込み客を生み出す手段を持てません。代わりとなる経路には、次のようなものがあります。
- 展示会・商談会への出展
- 自社サイトでの情報発信と問い合わせ導線
- 業界メディアや紹介サイトへの掲載
これらの経路が整っていれば、営業担当者は自分で見込み客を獲得しながら実績を積めます。受注経路を複数用意できていれば、採用後の立ち上がりは大きく変わります。
初回接触から受注までの営業プロセスの定義
採用前に決めるべきは、初回接触から受注までの営業プロセスを定義できているかです。プロセスが個人の感覚に依存していると、採用した営業担当者は何をいつ行うべきか判断できません。最低限定義すべき項目は、次の通りです。
- 初回接触時のヒアリング項目
- 提案書を提示するタイミング
- 見積・条件交渉の進め方
- 受注・失注の判断基準
このプロセスが型として存在すれば、営業経験の浅い担当者でも一定の水準で商談を進められます。受託開発やSESでも、要件ヒアリングから見積提示までの流れを標準化しておくことで、属人化を防げるでしょう。営業プロセスが定義できていて初めて、採用した人材は再現性のある成果を出せるようになります。
下請け企業が自社で営業機能をつくった事例4選
下請け構造からの転換は、実際に成果を出した企業の事例からも学べます。ここでは、顧客の再定義、受注構造の転換、事業領域の拡大、収益モデルの転換という4つの異なるアプローチを紹介します。製造業3社に加え、IT業界からヌーラボの事例も取り上げます。
由紀精密:顧客アンケートによる自社の強みの再定義と、売る相手の絞り込み
由紀精密は、既存顧客へのアンケートから自社の強みを再定義し、売る相手を絞り込むことで新規取引を開拓しました。同社はもともと公衆電話部品の量産を担っていましたが、携帯電話の普及によって需要が激減し、経営が悪化します。そこで着手したのが、次の取り組みです。
- 既存顧客へのアンケート・ヒアリングの実施
- 強みを「品質への信頼性」と特定
- ターゲットを航空宇宙分野に絞り込み
2008年の国際展示会出展をきっかけにJAXAとの取引が始まり、5年間で取引先数は5倍に増えました。自社の強みを顧客の声から再定義し、ターゲットを絞ったことが、新規開拓の起点になっています。
【製造業】HILLTOP:受注構造そのものの転換による、取引社数約9倍増
HILLTOPは、受注構造そのものを変えることで、取引社数を約9倍に増やしました。同社はかつて、自動車メーカーの孫請けとして、受注の8割を占める大量生産の仕事に依存していました。そこで、次の転換に踏み切ります。
- 大量生産から多品種単品生産へ切り替え
- 特定元請けへの依存から脱却
2010年度からの9年間で、取引社数は約400社から約3,500社へ、売上高は約5億円から約23億3,000万円へ拡大しました。利益率も20〜25%に達し、業界水準の3〜8%を大きく上回っています。
【製造業】浜野製作所:加工の請負から設計・開発の相談窓口への役割転換
浜野製作所は、加工の請負業から、設計・開発段階からの相談窓口へと自社の役割を変えました。金属加工業だった同社は、次のように事業の役割を広げていきます。
- 多品種少量の試作支援へ対応拡大
- 顧客の装置開発そのものを支援
- 「Garage Sumida」で構想・設計・試作・量産化を一気通貫で支援
オリィ研究所への支援を起点に、WHILLやチャレナジーなど、スタートアップから大企業まで依頼が入る構造ができあがりました。
【IT】ヌーラボ:受託開発の終了と、自社サービス一本の収益構造への移行
ヌーラボは、受託開発を終了し、自社サービス一本の収益構造へ移行することで安定した成長を実現しました。2004年の創業時、同社の事業の中心は顧客のソフトウェア開発を請け負う受託開発でした。そこから、次のステップで収益の柱を移していきます。
- 2006年から自社サービスの開発・運用を並行開始
- 2013年に受託請負事業を終了し、自社サービスへ完全移行
主力サービス「Backlog」は有料ユーザー数150万人を超え、2026年3月末時点の有料契約件数は1万5,676件に達しています。受託開発への依存から脱却し、自社サービスに集中したことが、安定的な収益構造を生んだ事例です。
下請け企業の営業がどこで止まっているかを見極める3つの視点
営業がうまくいかない原因を特定するには、営業個人・営業組織・商品競争力の3つの視点で切り分ける必要があります。個人のスキル不足なのか、組織の仕組み不足なのか、商品そのものの訴求力不足なのかによって、打つべき対策は変わります。
3つの視点から、自社がどこで止まっているかを確認しましょう。
営業個人:ヒアリングと提案のスキルが身についているか?
営業個人の課題は、ヒアリングと提案のスキルが型として身についているかで見極められます。商談が仕様の確認と見積の提示だけで完結している場合、顧客の潜在課題を引き出せていない可能性が高いです。
| 確認項目 | 止まっているサイン | 型になっている状態 |
|---|---|---|
| 商談の中身 | 仕様確認と見積提示だけで終わる | 顧客の背景・課題まで聞き取っている |
| 質問設計 | 担当者の経験と勘に依存している | ヒアリングシートなど型が存在する |
| 課題の引き出し方 | 顧客が言った要望をそのまま受ける | 顧客も気づいていない課題まで掘り下げる |
質問設計が型になっていなければ、経験のある営業担当者しか課題を引き出せません。ヒアリングと提案が型として使える状態かどうかが、個人スキルの見極めポイントです。
商談に同席してると、「今回の仕様はこちらでよろしいですか」で終わる担当者と、「この仕様にされた背景、何かあったんですか」まで聞く担当者がいるんです。前者は見積もり合戦に巻き込まれていって、後者はそのまま相談相手になっていく。この一言があるかないかだけで、その後の関係が全然違うんですよね
営業組織:受注プロセスが型として共有されているか?
営業組織の課題は、受注プロセスが型として共有され、誰でも再現できる状態かで見極められます。社長や特定のベテランだけが受注できる状態は、組織の力ではなく個人の力に依存しているにすぎません。
| 確認項目 | 止まっているサイン | 型になっている状態 |
|---|---|---|
| ヒアリング項目 | 担当者ごとに聞く内容が違う | 項目がシート化・標準化されている |
| 提案フォーマット | 毎回ゼロから資料をつくる | 共通テンプレートが存在する |
| 振り返りの仕組み | 受注・失注理由が言語化されない | 商談後にレビューし次に反映している |
これらが未整備だと、営業担当者が増えても成果は個人差に左右されたままです。受託開発やSESでも、案件ごとに提案の質がばらつく場合は、同じ組織課題を抱えている可能性があります。受注プロセスが型として共有されているかどうかが、組織の見極めポイントです。
商品競争力:自社の強みが顧客に選ばれる理由になっているか?
商品競争力の課題は、自社の強みが価格以外の判断軸として顧客に伝わっているかで見極められます。競合と比較された際に、価格以外の判断軸を提示できていなければ、営業担当者がどれだけ努力しても成果にはつながりません。
| 確認項目 | 止まっているサイン | 型になっている状態 |
|---|---|---|
| 比較時の訴求軸 | 価格でしか比較材料を出せない | 品質・納期・柔軟性など複数軸がある |
| 強みの言語化 | 「技術力がある」など抽象的な表現のみ | 顧客の課題と結びつけた具体的な言葉がある |
| 実績の提示 | 実績数値や事例が資料にない | 数値・事例つきで裏付けを示せている |
この定義が曖昧なままでは、営業を強化しても土台となる訴求力が不足したままです。商品競争力が言語化されているかどうかが、3つ目の見極めポイントです。
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下請け企業の営業に関するよくある質問
下請け企業の営業に関して、経営者・営業責任者から寄せられる質問とその回答をまとめました。採用のタイミング、期間の目安、既存取引への影響など、実務で判断に迷いやすいポイントに絞って回答します。
営業担当者を採用すれば新規開拓は進みますか?
進みません。採用は新規開拓が進む条件の一部にすぎないためです。
ターゲットと提供価値、営業プロセスという3つの土台が決まっていなければ、どれだけ優秀な人材を採用しても、何を誰にどう売るか判断できず動けません。
実際、採用直後の営業担当者が名刺交換だけを重ねて成果につながらないケースは珍しくないでしょう。採用の前に、この3つを経営者側で整理しておく必要があります。
自社で受注をつくれるようになるまでどのくらいかかりますか?
最低でも半年から1年は必要です。強みの言語化とターゲット設定だけで、数カ月を要するためです。
既存顧客へのヒアリングを通じて自社の強みを再定義し、狙うべき業界を絞り込む工程は、社内の議論だけでは進みにくく、相応の時間がかかります。そこから営業資料を整え、実際の商談で反応を確かめる期間も加わるでしょう。短期間での成果を期待するより、半年から1年単位で計画を立てるのが現実的です。
直取引を開拓すると既存の元請けとの関係は悪化しませんか?
悪化しません。既存取引の維持と新規経路の構築は、両立できる取り組みだからです。
直取引の開拓は、既存の元請けから乗り換えることではなく、受注経路を1本から複数へ増やす活動にすぎません。元請けとの取引を継続しながら、並行して自社の顧客接点を広げる企業は数多く存在します。関係悪化を懸念して着手を先送りするより、両立を前提に動き出すほうが得策です。
下請け企業が最初に着手すべきことは何ですか?
既存顧客へのヒアリングです。自社が選ばれている理由を言語化することから始まるためです。
新規開拓や営業資料の刷新に着手する前に、既存顧客がなぜ自社を選び続けているのかを聞き出すことで、強みの輪郭が見えてきます。この強みが定まらないまま次の施策に進んでも、訴求軸が定まらず成果につながりにくいでしょう。まずは足元の顧客の声から着手するのが、遠回りに見えて最短ルートです。
IT(SES・受託開発)や建設など、他の受託業種でも同じ考え方は使えますか?
使えます。多重下請構造という共通点があり、考え方は業種を越えて転用できるためです。
特にSESや受託開発は、多重下請け構造や仕様書通りの御用聞き営業という課題が、製造業と完全に共通しています。元請けからの発注に応じる業務が中心になりやすい構造も同様でしょう。業種は違っても、自社の強みを言語化し、ターゲットを絞り、受注経路を分散させるという打ち手の骨格は変わりません。
まとめ|下請けをやめるのではなく、自社で受注をつくれる状態を目指す
下請け企業で営業が育たないのは、能力の問題ではなく、既存取引に頼った構造の中で新規開拓が業務として定義されてこなかったためです。
目指すべきは下請けをやめることではなく、下請けを続けながら新規の受注経路を持ち、取引先を分散させ、価格と受注量を自社の判断でコントロールできる状態です。
そのためには、採用前に技術の翻訳・ターゲット選定・営業資料・受注経路・営業プロセスの5つを整理しておく必要があります。
既存顧客への地道なヒアリングから強みを再定義することが、変化の起点になるでしょう。受託開発やSESにおいても、多重下請構造という共通課題を抱えている以上、この考え方はそのまま応用できます。
まずは自社の営業が、個人・組織・商品競争力のどこで止まっているかを確認するところから始めてみてください。CLF PARTNERSは、累計400社以上・3,000人以上の支援実績と6カ月以内の成果コミットで、貴社の営業を「社長の個人技」から「組織で再現できる仕組み」へ変えます。
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この記事の監修者

CLF PARTNERS株式会社
代表取締役社長 松下 和誉
大学卒業後、大手総合系コンサルティングファームに入社。最年少で営業マネジャーに就任。中小企業から大手企業まで幅広くコンサルティング業務を実施。また、文部科学省からの依頼を受け、再生機構と共に地方の学校再生業務にも従事。 その後、米Digital Equipment Corporation(現ヒューレットパッカード)の教育部門がスピンアウトした世界9ヵ国展開企業のJAPAN営業部長代行として国内の最高売上に貢献。 現在は関連会社12社の経営参画と支援を中心に、グループの軸となるCLF PARTNERS㈱ではVC出資ベンチャー企業、大企業の新規事業の支援に従事
公式Xアカウント:https://x.com/clf_km




