様々なITツールの登場やデジタルマーケティングの進化により、BtoB企業が営業を仕組み化し組織的に活動していくことの重要性が高まってきています。
一方で、組織営業の立ち上げや仕組み作りの経験がなく、「チームとして営業活動で成果を出す方法が分からない…。」とお悩みの方も少なくないのではないでしょうか。
今回の記事では、組織営業とはどういったものなのか、目的やどういうポイントが重要なのかについて解説いたします。記事の後半ではスタートアップ企業や大手企業での組織営業の事例についても紹介いたします。
弊社CLF PARTNERSでは、様々な企業の営業組織を支援してきたノウハウを生かし、営業組織の立ち上げや改善をサポートしています。営業組織の立ち上げや改善に専門家のサポートが必要と感じた場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
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組織営業とは?
「組織営業」とは、企業の営業活動を仕組み化し、組織全体で売上を最大化させるための取り組みのことです。
営業ノウハウの共有や、営業活動のデータ化、ITツールの活用などによって、個々人の営業スキルや経験に依存せずに新規顧客の開拓や既存顧客へのフォロー等ができるようになります。
一方で、営業活動の仕組み化ができておらず、個々人のスキルや経験に依存している状態のことを「属人営業」と呼びます。
社内で営業の情報共有をする文化が無かったり、チームワークではなく個人での成果ばかりが評価されたりしてしまう組織では、どうしても属人営業が良しとされてしまう傾向があります。
属人営業自体は必ずしも悪いものではないのですが、中長期的に売上を伸ばそうとする際にボトルネックになってしまう可能性があるので注意が必要です。
組織営業を行う目的
では、企業が属人営業ではなく組織営業を行う目的としてはどのようなものがあるのでしょうか?
ここからは、企業が組織営業を行う際の主な目的について具体的に解説いたします。
営業の属人化を防ぐ
まず、組織営業を行う1つ目の目的は、営業の属人化を防ぐためです。
営業の仕事が属人化してしまうと、優秀な営業社員が退職してしまったタイミングで、会社の売上も大きく下がってしまう可能性があります。
優秀な営業社員はどの企業も欲しがる人材であるため転職も難しくないですし、場合によっては営業力を生かして独立してしまう可能性も考えられます。
優秀な営業社員がいること自体は素晴らしいことですが、自社の売上が個々人のスキルや経験に依存している状態は見えない大きなリスクを孕んでいるのです。
組織営業の仕組みを取り入れると、優秀な営業社員が退職してしまったとしても、業務を社内でスムーズに引き継ぐことができるようになります。
営業成果を最大化させる
次に、組織営業を行う2つ目の目的は、営業成果を最大化させるためです。
企業が営業成果を最大化させるためには、営業チームの社員一人一人が最大限の力を発揮していく必要があります。
ですが、多くの企業では営業社員一人一人のスキルや経験に差があるはずです。この状態で属人的な営業活動を行ってしまうと、人によって営業の成果にバラつきが出てしまい、大きな機会損失になってしまいます。
また、営業で成果が出せない社員はモチベーションを失ってしまい、退職してしまうことも考えられます。
組織営業の仕組みを取り入れることで、どんな社員でも一定の営業成果を出せるようになり、組織全体での営業成果が最大化されます。営業方法が仕組み化されているため、仕事も効率的に進めることができますし、社員のストレスも軽減されます。
新卒社員や若手社員も含めて、組織全体での営業成果を最大化させるためにも、組織営業の仕組みは重要です。
顧客満足度を上げる
最後に、組織営業を行う3つ目の目的は、顧客満足度を上げるためです。
属人営業では、優秀な営業社員は顧客の満足度を高められる一方で、スキルや経験の少ない営業社員は顧客の満足度を高めることができず、場合によってはクレームや契約解除に繋がってしまうことも考えられます。
顧客の目線で考えると、同じ会社に仕事を依頼しているのであれば、担当者に関わらずある程度同じレベルの仕事をして欲しいと考えるのが自然でしょう。
組織営業の仕組みを取り入れることができれば、担当する営業社員に関わらず、一定の品質でサービスを提供することができるようになり、顧客満足度も高まります。結果として、自然と自社の売上向上にも繋がっていきます。
組織営業を行うポイント9選
では、組織営業を自社に取り入れるためには、どのようなポイントを意識する必要があるのでしょうか?
ここからは、属人営業を脱却し組織営業を行うためのポイントを9つに分けて紹介いたします。
現状の営業組織の課題を整理する
まずは、現状の営業組織の課題を整理していくことから始めましょう。
新規開拓営業・既存営業のそれぞれで、どういうプロセスで営業活動を行っているのかを整理し、売上のボトルネックとなっている点を見つけていきましょう。
例えばですが、営業組織として「顧客と商談はできているものの、あまり受注に繋がっていない」ということが判明したとします。その場合、次のような点がボトルネックになってしまっている可能性があります。
- 顧客との商談内容に問題がある。
- 商談をしている顧客の属性が自社に合っていない。
- 提供している商品やサービスに問題がある。
社内でのヒアリングなどを通じて状況を把握し、課題をできるだけ具体的に特定していきましょう。
こちらの記事では営業組織でよくある課題をまとめて紹介しています。
関連記事:営業組織であるあるの課題8選とは?実践で使える解決策も紹介
課題を元に戦略や施策を検討する
次に、整理した課題を元に、営業の戦略や施策を検討していきましょう。
もし顧客との商談内容に問題があるのであれば、トークスクリプトや営業資料の改善を検討したり、社内で営業のノウハウを共有する仕組み作りを強化したりする必要があります。
もし営業でアプローチしているターゲットが自社と合っていないのであれば、営業リストやマーケティングの方法を改善していく必要があります。
このように、特定した現状の営業組織の課題を元に、どのような組織営業を行えばボトルネックが解消できるのか、戦略や施策を検討していきましょう。
こちらの記事では、営業戦略の立て方や考え方について5ステップで解説しています。
関連記事:営業戦略の立て方・考え方5ステップ|種類・成功事例を解説
目標設定を行い組織で共有する
次に、営業組織としての目標設定を行い、社内で共有することも重要です。
営業社員1人1人の目標だけでなく、組織やチーム全体で目標を設定することで、「みんなで目標を達成しよう!」という意識が自然と芽生えます。
また、目標については売上や利益などの目標だけでなく、商談数や架電数等の行動回数で目標を設定すると良いでしょう。
新卒社員や若手社員であっても、目標に向かって行動回数を増やしていくことは難しくないはずです。行動回数の目標を達成することで、自然と売上や利益などの目標も達成できるような営業の仕組みを作っていきましょう。
営業ノウハウの情報共有を行う
次に、営業ノウハウの情報共有を積極的に行うようにしましょう。
組織営業で成果を出していくためには、社員それぞれが日々の営業ノウハウを共有していくことが重要です。営業活動でうまくいったケースはもちろん、うまくいかなかったケースも含めて情報共有ができる環境づくりをしていく必要があります。
チャットや会議等で情報共有をしたりするのはもちろん、商談を録画して社内で共有するというのも効果的です。
ノウハウを実践できるようにロープレを行う
次に、社内に溜まった営業ノウハウを実践できるように、ロープレを行ってみましょう。
ロープレとは「ロールプレイング」のことで、社内のメンバーで実際の商談を再現しながら営業のトレーニングを行う方法です。
多くの営業組織では、社内で様々な事例や情報を共有をしているものの、各営業担当者が「どのような時に」、「どのような事例を」使ったら良いかかが分かっていないケースがよくあります。
ロープレを行うことで、実際の商談を想定しながら、どのようにヒアリングを行い、どのような情報を提供して商談を進めていくのか、実戦形式でトレーニングを行うことができます。
このロープレが上手く出来ている組織こそ、組織営業が出来ているといっても過言ではありません。
ロープレは題材を決めて、対象者は2~3名をMAXとして行いましょう。ロープレ後は必ず自身で振り返りをしていただき、自身意外の対象者全員からもフィードバックをもらうようにしましょう。(他の人のロープレをしっかりと観察するようになります)そして上司や先輩からのフィードバックも忘れずに行いましょう。
セールスコンテンツを作成する
次に、セールスコンテンツを作成するというのも効果的です。
セールスコンテンツとは、営業資料やお役立ち資料、商品紹介動画などの営業に活用できるコンテンツの事です。
扱う商品やサービスによっては、営業担当が頑張って口頭で説明するよりも、具体的な実績や効果が分かるようなセールスコンテンツを見せたほうが顧客に刺さることもあります。
また、セールスコンテンツが充実していれば、社員の経験やスキルに依存することなく顧客に適切な情報を提供しやすくなります。
マーケティング部門と連携する
次に、マーケティング部門と連携をして組織営業を行っていくことも重要です。
BtoB企業において、営業とマーケティングは密接に関わっています。マーケティング部門が商談を獲得している組織であれば、マーケティング部門と営業部門がうまく連携しないとどこかでボトルネックができてしまいます。
組織営業を行う際は、マーケティング部門ともうまく連携し、情報共有ができるように仕組み作りをしていきましょう。
例えばですが、定例会議を行いマーケティング部門のリード獲得情報や営業部門の商談状況、それぞれのKPI等を擦り合わせていくのも一つの方法です。
情報を共有し擦り合わせていくことで、「マーケティング部門が質の低いリードを獲得してくる」「営業部門がリードを受注に繋げてくれない」といった対立を防ぐことにも繋がります。
それぞれの情報共有をおこなうことで、より解像度高く顧客の情報を把握することができるようになり、様々な施策でPDCAが回しやすくなります。
ITツールを導入しデータを元にPDCAを回す
次に、ITツールを導入し、得られるデータを元にPDCAを回していくことも重要です。
SFAやCRM等のツールを活用することで、顧客情報や営業活動が見える化していき、データに基づいてPDCAを回していくことができるようになります。
注意点として、ツールを導入したからと言ってすぐに組織営業の仕組みができるわけではありません。地道に営業担当が情報を入力したり、データを元に改善施策を考えて実行していくことを忘れないようにしましょう。
顧客目線を忘れないようにする
最後に、組織営業の仕組みを作る際には、顧客目線を忘れないようにすることも意識しておきましょう。
営業活動において売上や利益などの数値は大事ですが、そればかりを考えていると顧客の役に立たない商品やサービスを無理に売ってしまうことにも繋がります。
組織全体で営業がうまくいっていない場合、顧客目線で考えてみると営業方法や商品・サービスに何かしらの問題がある可能性があります。
組織全体で営業成果を上げるためには、当然ながら顧客目線で魅力的な提案を行い、商品やサービスを導入してもらう必要があります。その点を意識したうえで営業の仕組みを作り、PDCAを回していきましょう。
組織営業の成功事例
最後に、実際に組織営業の仕組みを取り入れて成果を出した成功事例を紹介いたします。
スタートアップ企業で組織営業を立ち上げた事例
まず、スタートアップ企業が組織営業を立ち上げた事例を紹介いたします。
アルー株式会社は、2003年に創業され、2018年に東証マザーズに上場しました。
事業内容やプロダクトが決まっていない状況から営業を始め、事業拡大に伴って少しずつ営業活動を組織化していきました。
まず、立ち上げ段階では優秀な営業社員が属人営業で成果を出していき、そのノウハウを営業メンバーに共有していきました。
そして、自社のプロダクトが顧客に受け入れられていくと、採用活動や育成活動への投資を積極的に行っていきました。この段階で営業部門の仕組み化ができていたため、経営者は他の業務に集中できる状態になっていました。
結果として、アル―株式会社は東証マザーズへの上場に成功し、2024年現在では100名以上の組織になっています。
スタートアップ企業の場合はいきなり組織営業を取り入れることは難しく、経営者や優秀な営業社員が属人的に営業活動を行っていきます。しかし、そのまま属人営業だけで成長を続けることは難しいため、新卒社員や中途社員を採用し組織作りに取り組んでいきます。
出典:【保存版】スタートアップ営業組織作りの教科書(Executive summary)
大手企業で組織営業に取り組んだ事例
次に、大手企業が組織営業に取り組んだ事例を紹介いたします。
株式会社日立ソリューションズでは、営業部門の分析を行ったところ、1人当たりの売上が頭打ちになっていることが分かりました。
ただ、営業活動の状況は可視化されておらず、戦略や施策を考えることができない状態でした。そこでSFAの再構築と定着化に取り組み、社内での資料作成や会議などに使う時間を削減。またデータを元にしたインサイドセールスの育成にも繋がりました。
出典:業績会議・資料ゼロへ SFA再構築×インサイドセールス育成で挑む日立ソリューションズの営業改革
まとめ
今回の記事では、組織営業という言葉の意味や、組織営業を行う目的やポイントについて解説いたしました。
属人的な営業活動を行っていると、優秀な営業社員の離職等が大きなリスクとなってくる上、営業成果の最大化や顧客満足度の向上が難しくなってきます。
未だに「営業は属人的で当たり前!」というイメージも強いですが、社内で情報やノウハウを共有し組織営業を行っていく企業が近年は増えてきています。
ぜひ、今回の記事を参考に、組織営業に取り組んでみてください。また、弊社CLF PARTNERSでは、組織営業の支援サービスを提供しています。350社以上の支援実績を持つ専門家集団として、営業組織の立ち上げやコンサルティングを行っております。組織営業に課題感のある方は、ぜひCLF PARTNERSにご相談ください。
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この記事の監修者
CLF PARTNERS株式会社
代表取締役社長 松下 和誉
大学卒業後、大手総合系コンサルティングファームに入社。最年少で営業マネジャーに就任。中小企業から大手企業まで幅広くコンサルティング業務を実施。また、文部科学省からの依頼を受け、再生機構と共に地方の学校再生業務にも従事。 その後、米Digital Equipment Corporation(現ヒューレットパッカード)の教育部門がスピンアウトした世界9ヵ国展開企業のJAPAN営業部長代行として国内の最高売上に貢献。 現在は関連会社12社の経営参画と支援を中心に、グループの軸となるCLF PARTNERS㈱ではVC出資ベンチャー企業、大企業の新規事業の支援に従事
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