Salesforce社が提唱する「The Model」の考え方が国内のBtoB企業にも広がり、インサイドセールスの組織を立ち上げる企業が近年増えてきています。
一方で、インサイドセールスは従来の営業活動と違う部分も多くあり、業務の進め方や組織の作り方に悩んでいる担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回の記事では、インサイドセールスの立ち上げ方について、10ステップでできるだけ詳細に解説をいたします。また、記事の後半では具体的な事例も紹介しています。
「インサイドセールスを立ち上げたいけど方法が分からない!」
「インサイドセールスを立ち上げたけれどうまくいかない!」
という担当者の方は、ぜひ最後までチェックしてみてください。
弊社CLF PARTNERSでは、様々な企業の営業組織を支援してきたノウハウを生かし、インサイドセールスの立ち上げをサポートしています。インサイドセールスの立ち上げや改善に専門家のサポートが必要と感じた場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
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目次
インサイドセールスの立ち上げを行う目的
最初にインサイドセールスの立ち上げを行う目的について解説いたします。
そもそもインサイドセールスとは?
まず、そもそも「インサイドセールス」とはどのような役割なのでしょうか?
インサイドセールスとは、電話やメール、オンライン会議などを使用した非対面で行われる営業活動のことを指します。一般的には内勤営業とも呼ばれます。また、従来型の顧客と直接会う対面営業のことを「フィールドセールス」と呼び、「インサイドセールス」と「フィールドセールス」を組み合わせて成果を出している企業が最近は増えてきています。
インサイドセールスの仕組みを導入することで、オンラインで顧客企業に訪問することなく営業活動が行えるようになります。そのため、効率よく受注に繋がりそうな顧客を見極め、商談を行い契約に繋げていくことができるようになります。
また、インサイドセールスは新規顧客向けの営業だけでなく、既存顧客向けの営業も可能です。既存顧客とオンラインで定期的にコミュニケーションを取り、サポートや追加の提案を行うことで、顧客の満足度向上や自社の売上に繋がっていきます。
下記の記事では、インサイドセールスの役割についてより詳細に解説していますので、合わせて参考にしてみてください。
※関連記事:インサイドセールスとは?役割やメリット、導入ポイントをわかりやすく解説
インサイドセールスの必要性
インサイドセールスという言葉は近年注目度も高まってきており、成功事例や求人の募集も増えてきています。
こちらは、Googleトレンドという「指定したキーワードがGoogleで検索された数の推移」が分析できるサイトのデータなのですが、「インサイドセールス」という言葉の検索数は毎年右肩上がりに増えてきています。
一方で、「インサイドセールスという言葉はよく聞くけど、自社に必要なのかどうかよく分からない。」と感じている方も少なくないかと思います。上司に「インサイドセールスを導入したい」と言われて、よく分からないまま情報収集している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
社内でインサイドセールスを立ち上げるためには、「なぜインサイドセールスの仕組みが多くのBtoB企業に必要なのか」という点から理解しておく必要があります。
まず、企業にインサイドセールスの必要性が高まった最も大きな理由として、顧客の購買行動の変化が挙げられます。
従来は、BtoB取引において顧客が何かの商品を購入するためには、商品を扱う営業担当者と直接話をして情報を集める必要がありました。ですが、近年ではインターネットを活用し顧客が自由に情報収集を行えるようになり、営業担当者に会う前に購入する商品を選定するようなケースが増えてきたのです。
また、近年ではデジタルマーケティングや営業に用いられるツールが進化しています。様々なツールを駆使することで、顧客のWEBサイトでの行動データが分析できるようになったり、オンライン会議で交通費をかけずとも手軽に商談ができたりするようになってきています。
そのような時代背景もあり、インサイドセールスの必要性は高まり、組織を立ち上げようとする企業も増えてきているのです。
インサイドセールスの立ち上げ方10ステップ
ここまで、インサイドセールスの立ち上げを行う目的について解説をさせていただきました。
社内でインサイドセールスを立ち上げることで、オンラインで効率よく商談を行い、自社の売上に繋げていくことが期待できます。また、顧客企業の「ネットで情報収集をしたい」というニーズに合わせて最適な営業活動をすることにも繋がります。
では、社内でインサイドセールスを立ち上げるには、何から始めていけばよいのでしょうか?
ここからは、インサイドセールスの立ち上げについて、様々な企業の営業支援を行っている弊社のノウハウを踏まえて、10のステップに分けて解説させていただきます。
①課題と立ち上げの目的と目標を明確化する
インサイドセールスを立ち上げる前に、まずは自社における営業全体の現状の課題を分析しましょう。そして、現状の課題を踏まえて、インサイドセールスを立ち上げる目的と目標を明確にしていきましょう。
例えばですが、下記のようなケースが考えられます。
■現状の営業課題
外勤営業が受注の確度が低い顧客の対応に時間を使ってしまい、売上が停滞している
■インサイドセールスを立ち上げる目的
メールや電話、オンライン会議などで受注確度の高い見込み顧客を絞り込み、外勤営業の仕事を効率化しつつ受注数を増やす
■インサイドセールスの目標
受注に繋がる商談数を○○件増やす
自社の営業組織において、どこが受注までのボトルネックになっているのかを分析したうえで、インサイドセールスを立ち上げる目的と目標を明確にしていきましょう。また、自社で複数の商材を扱っている場合は、どの商材でインサイドセールスの立ち上げに取り組むかも考えておきましょう。
②インサイドセールスの役割と業務範囲を決める
次に、インサイドセールスの目的と目標を明確化することができたら、インサイドセールスの具体的な役割と業務範囲を決めていきましょう。
前述したように、インサイドセールスは企業の営業活動における様々な役割を果たすことができます。しかしながら、立ち上げ段階で多くの役割をインサイドセールスに求めてしまうと、担当者がうまく対応できなかったり、PDCAが回しにくくなったりしてしまう可能性があります。
立ち上げの段階では、インサイドセールスは役割をある程度限定し、自社の営業プロセスに合わせた業務範囲を設定しましょう。
まずは、営業プロセス全体の設計を行い、その中で自社のインサイドセールスチームの目的に応じた最適な役割を設定していきましょう。
インサイドセールスの役割としては、例えばですが
- クロージングはフィールドセールスにバトンタッチする「分業型」
- 場合によってはインサイドセールスがクロージングする「協業型」
- 初回の接触からクロージングまで担当する「独立型」
等が考えられます。
③CRM(顧客関係管理)を整備する
次に、インサイドセールスのシナリオ設計ができたら、CRM(顧客関係管理)を整備していきましょう。
顧客情報や商談データ等を管理することで、効率よく見込み顧客とコミュニケーションができるようになります。また、インサイドセールス担当者のマネジメントにも活用が可能です。
具体的には、CRMを利用し下記のようなデータを見える化することで、営業活動やマーケティング活動を改善していくことが可能になります。
- 顧客からの問い合わせ内容
- リード獲得の経緯
- 顧客との商談状況
- 自社の活動状況
- 集客チャネルごとの商談数や商談率
- 次回アプローチのタイミング
インサイドセールスで成果を出すためには、このようなデータを元に受注までのボトルネックを改善したり、具体的な施策に落とし込んだりしていくことが重要です。
また、CRMを整備する場合は、「Excel」や「Googleスプレッドシート」等で管理するのか、「CRM機能のあるツール」を活用し管理するのかを検討する必要があります。
「Excel」や「Googleスプレッドシート」を使う場合は、追加の費用をかけずすぐに顧客管理ができる一方で、大量の顧客データを扱うには不便ですし、顧客データの分析も難しくなってしまいます。
「CRM機能のあるツール」を使う場合は、多くの場合利用するために費用がかかってきますが、大量の顧客データを簡単に管理・分析することが可能になります。
自社の状況に合わせてどのようにCRMを整備するかは検討する必要があるでしょう。
④KPIを設計する
次に、CRMの整備ができたら、インサイドセールスのKPIを設計していきましょう。
KPIとは「Key Performance Indicator」のことで、目標達成のために設定する中間目標のことを指します。
例えばですが、「荷電数」「メール送信数」「商談数」「有効商談数」「受注数」等がインサイドセールスのKPIとなります。
自社でのインサイドセールスの役割や業務範囲を踏まえて、受注から逆算し売り上げに繋がるようなKPIを設計しましょう。
一方で、インサイドセールスの立ち上げ初期の場合、「商談数」をKPIにしても商談に繋がらず担当者のモチベーションが下がってしまう可能性も考えられます。まずは「荷電数」や「メール送信数」等の行動回数をKPIに設計して、目標の行動回数を達成することからはじめてみるのも一つの手です。
そして、ある程度の行動数が達成できるようになってきたら、「商談数」や「有効商談数」などの受注に近いKPIを元にPDCAを回していくと良いでしょう。
⑤ターゲット企業を特定する
次に、インサイドセールスのKPIが設計できたら、アプローチするべきターゲット企業を特定していきましょう。
インサイドセールスでは、受注に繋がりそうな顧客を見極め、効率よく商談を打診していく必要があります。ターゲットではない企業にいくらアプローチしても、商談や受注には繋がりにくいため、担当者が疲弊してしまいます。
自社の今までの受注履歴や商談履歴を元に、どのようなターゲットだと受注に繋がりやすいのかを考えてみましょう。業界やエリア、事業規模や従業員数、抱えている課題などで企業を絞り込み、アプローチする優先順位を決めていきましょう。
この際に、具体的な企業名だけでなく、部署や役職まで絞り込むことができると、より精度高く顧客にアプローチができるようになるでしょう。
⑥シナリオの設計
次に、インサイドセールスの役割と業務範囲が決まったら、インサイドセールスが顧客に対してどのようにアプローチをするのか具体的なシナリオの設計を行いましょう。
例えばですが、「自社のオウンドメディアから資料請求をした顧客」と「ウェビナーの参加後に具体的な問い合わせのメールを送った顧客」では、顧客の商品への関心度が違うと考えられます。
資料請求をした顧客は「情報収集が目的で商談は求めていない!」という可能性も高いはずです。一方で、問い合わせのメールを送った顧客は「より具体的な情報を聞きたい!」と考えている可能性が高いでしょう。
顧客の購買プロセスのフェーズに合わせて、どのような情報を伝えると良いのか、メールで済ますべきか商談を打診するべきか等、具体的なシナリオをあらかじめ考えておきましょう。
⑦トークスクリプトを作りこむ
次に、ターゲット企業を特定することができたら、具体的なトークスクリプトを作り込んでいきましょう。
トークスクリプトとは、実際に顧客と電話をする際の会話内容のことです。あらかじめトークスクリプトを作り込むことで、実際に電話をする際にもスムーズにヒアリングをしたり、商談を打診したりすることができるようになります。
また、トークスクリプトを準備しておくことで、顧客との電話や商談経験の少ない担当者でもインサイドセールスに取り組みやすくなります。
⑧メンバーを集めて育成する
次に、トークスクリプトの作り込みが完了したら、インサイドセールスのメンバーを集めて育成を始めていきましょう。
実際にインサイドセールスの活動を行う担当者だけでなく、マネージャーも含めてアサインをし育成していきましょう。
インサイドセールス立ち上げの際にメンバーをアサインする際は、下記のような方法を検討してみてください。
- フィールドセールスで実績を上げている人をインサイドセールスに登用する。
- 中途でインサイドセールス経験者を採用する。
- 外部にインサイドセールスの委託を検討する。
自社の現状の営業組織や営業への課題感等に合わせて、どの方法が良いか検討してみてください。
インサイドセールスの立ち上げを行う際、社内にはインサイドセールスの経験者が1人もいないということはよくあります。自社内でメンバーを集める際は、育成を前提に考える必要があるでしょう。
また、下記の記事では強い営業組織を作るためのポイントについて解説しています。メンバーの育成にお悩みの方は参考にしてみてください。
※関連記事:強い営業組織とは?強い営業組織に改革するためのポイント6選
⑨ツールを導入する
次に、ここまでのステップで設計してきた内容を踏まえて、ツールの導入を進めていきましょう。
インサイドセールスでは、様々なツールを活用することで効率的に営業活動を行うことができるようになります。インサイドセールスの行う業務は幅広く、タスクも多くなる傾向があるため、できるだけツールを活用して無駄な業務に割く時間を減らしていきましょう。
例えばですが、「名刺管理ツール」「MAツール」「CRM」「SFA」「オンライン会議ツール」などのツールを、自社の課題や目的に合わせて導入を検討してみましょう。
⑩ノウハウを共有しPDCAを回す
最後に、実際にインサイドセールスを行った後は、顧客とのコミュニケーションを通じて得たノウハウを共有し、PDCAを回していきましょう。
ここまでインサイドセールスの立ち上げ方法について具体的に解説をさせていただきましたが、実際に顧客にアプローチしたり、商談をしたりしてみると、計画通りにはKPIが達成できないこともあるでしょう。
また、ビジネス環境の変化によって、今までうまくいっていた仕組みがうまくいかなくなることもよくあります。
インサイドセールスの業務で仕組み化は重要ですが、立ち上げ時の設計を全てと思わず、地道に改善していくことも重要です。
日々顧客と接することで得られるノウハウを社内で蓄積し、業務フローやトークスクリプト等を改善していくようにしましょう。定期的に社内で情報共有をしたり、チャットなどで気軽に社内コミュニケーションが取れるようにしたりすると良いでしょう。
インサイドセールスを立ち上げた企業の事例
ここからは、インサイドセールスを立ち上げた企業の具体的な事例を紹介していきます。
企業の事例を知ることで、より生々しくインサイドセールス立ち上げの方法が理解できるはずです。
事例①株式会社ビザスク
株式会社ビザスクは、スポットコンサルをはじめとした様々なサービスを提供する企業です。
株式会社ビザスクでは、2019年に担当者1人でインサイドセールスを立ち上げ、2022年には7人までメンバーを増やしています。
メンバー内での情報共有も盛んにしており、社員全員で新メンバーをサポートするような文化もできているそうです。
出典:立ち上げ期から拡大期へ “最高のミッドフィルダー“インサイドセールスチームがアツい!
事例②株式会社ホットリンク
株式会社ホットリンクは、データを元にSNSのマーケティングを支援する企業です。
株式会社ホットリンクでは、フィールドセールスが自分でアポイントを取り商談を行うスタイルに限界を感じ、インサイドセールスの立ち上げを行いました。
インサイドセールスの業務範囲が明確でなく、何でも屋のような仕事になってしまったり、フィールドセールスとの連携がうまくいかなかったりといった課題を乗り越えていきながら、何とか立ち上げを行いメンバーを増やしてきたそうです。
出典:インサイドセールスの光と影~挫折と失敗を繰り返した、立ち上げ2年間の軌跡~
インサイドセールスの立ち上げは自社だけで行うべきか?
インサイドセールスを立ち上げる場合、自社で0から立ち上げを行う方法以外に、外部に委託して立ち上げを行う方法も考えられます。
最後に、インサイドセールスの立ち上げを自社だけで行う場合と外部に委託する場合それぞれのメリットとデメリットについて解説いたします。自社の課題感や目的に合わせて、どちらが良いか検討してみてください。
自社だけでインサイドセールスの立ち上げを行うメリットとデメリット
自社だけでインサイドセールスの立ち上げを行う場合、追加の採用をしなければコストを抑えて立ち上げを行うことが可能です。また、立ち上げ後も自社にノウハウが貯まり、長期的に営業組織を強化していくことができます。
一方で、自社にインサイドセールス経験者がいない場合、立ち上げや運用のノウハウがなく、成果に繋がりにくい可能性があります。
外部に委託してインサイドセールスの立ち上げを行うメリットとデメリット
外部に委託してインサイドセールスの立ち上げを行う場合、比較的短期間での立ち上げが可能になります。また、専門性の高い人材を確保することができますし、業務量に合わせて委託する内容を変更する事も可能です。
一方で、立ち上げには当然費用がかかりますし、業務を完全に外注してしまうと社内にノウハウも残りにくくなってしまいます。
インサイドセールスの立ち上げ支援サービスについて
弊社CLF PARTNERSでは、インサイドセールスの立ち上げ支援サービスを提供しています。弊社ではメンバーの成熟度に合わせた標準化マニュアルも作成いたしますので、社内にインサイドセールスのノウハウをしっかりと残すことが可能です。
350社以上の支援実績を持つ専門家集団として、様々な営業ノウハウを自社に蓄積し、クライアントに提供してきています。インサイドセールス立ち上げの戦略立案から実行まで、一貫した支援で成果に貢献します。インサイドセールスを立ち上げたいとお考えの方は、ぜひCLF PARTNERSにご相談ください。
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まとめ
今回の記事では、インサイドセールスを立ち上げる方法について、10ステップで解説をさせていただきました。
インサイドセールスを立ち上げるのは大変なことも多いですが、今回紹介した方法を1ステップずつ進めていけば、大きな失敗をせずに立ち上げができるはずです。
また、インサイドセールスの立ち上げで最初からうまくいくことは少なく、日々の改善によって徐々に成果が出てきます。立ち上げ段階での設計も重要ですが、立ち上げ後のPDCAも同様に重要です。
ぜひ今回の記事を参考に、インサイドセールスの立ち上げに取り組んでみてください。
この記事の監修者
CLF PARTNERS株式会社
代表取締役社長 松下 和誉
大学卒業後、大手総合系コンサルティングファームに入社。最年少で営業マネジャーに就任。中小企業から大手企業まで幅広くコンサルティング業務を実施。また、文部科学省からの依頼を受け、再生機構と共に地方の学校再生業務にも従事。 その後、米Digital Equipment Corporation(現ヒューレットパッカード)の教育部門がスピンアウトした世界9ヵ国展開企業のJAPAN営業部長代行として国内の最高売上に貢献。 現在は関連会社12社の経営参画と支援を中心に、グループの軸となるCLF PARTNERS㈱ではVC出資ベンチャー企業、大企業の新規事業の支援に従事
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